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家づくり研究室

【高性能住宅】家の暑さの7割は「窓」から!日射遮蔽のコツとハニカムスクリーン活用術

こんにちは。私の名はティール教授。当研究室へようこそ。今日も私の研究課題である家づくりについて話していきましょう。

日本の厳しい夏を快適に過ごすために欠かせないのが、家の「日射遮蔽(にっしゃしゃへい)」です。
日射遮蔽には4つのアプローチがあります。



①窓から入る日射をカットする
②屋根・壁で日射を反射する(光を吸収する黒色ではなく、白やシルバーなどにする)
③断熱材で熱の伝わりを防ぐ
④通気層を通じて、壁や屋根の内部の熱を逃がす



今回は①の「窓の日射遮蔽」について、具体的な方法やハニカムスクリーンの魅力などを詳しくお伝えします。

[目次]

1.夏の家の弱点は「窓」

2.窓の外側でできる日射遮蔽

3.窓の内側でできる日射遮蔽

4.ハニカムスクリーンの魅力と選び方

5.暑い夏を快適に過ごせるかは「窓」次第!



夏の家の弱点は「窓」

暑い夏でも快適な室温に保つには、太陽の熱を家に入れないこと、つまり「日射遮蔽」がとても重要です。日射遮蔽を効果的におこなうためには、まず「熱がどこから家の中に入ってくるのか」を知っておかなければなりません。



【熱が流入する割合/夏】

 • 窓:71%
 • 壁:13%
 • 屋根:9%
 • 換気:5%
 • 床:2%

なんと、外から流入する熱の大部分は「窓から」なのです。これは、窓の性能や対策が家の快適性に直結するということです。では、冬はどうでしょうか。室内の暖かい熱はどこから外へ逃げていくのか見てみましょう。



【熱が流出する割合/冬】

 • 窓:48%
 • 壁:19%
 • 換気:17%
 • 床:10%
 • 屋根:6%

冬も窓からの熱の流出は大きいですが、夏はその約1.5倍にもなります。そのため、窓への対策は冬よりも夏に照準を合わせる必要があるのです。



窓の外側でできる日射遮蔽

「日射をカットするなら、カーテンを閉めればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、日射遮蔽は窓の外側でおこなうのが理想的です。というのも、窓の内側で日射遮蔽しても、熱はすでに部屋の中に入ってしまっているから。では、実際にどのように窓の日射遮蔽をおこなえばよいのか、窓の外でできる対策を3つご紹介します。



庇(ひさし)

「窓の屋根」と言える庇は、すだれやアウターシェードのように開閉する手間がなく、雨除けにもなります。夏の太陽高度に合わせて角度を設計することで日射を効率的にカットできるため、基本計画の段階でしっかりと検討しましょう。近年多く見られるスクエア型の家も、日射遮蔽のために庇をつけることをおすすめします。



アウターシェード

日本人にはなじみ深いすだれを現代風に使い勝手よくしたものがアウターシェードです。複層ガラスとアウターシェードを組み合わせると、日射を60~80%カットできます。ロールカーテンと同じ仕組みなので、悪天候時の開閉も簡単です。



通風雨戸(ブラインドシャッター)

日射遮蔽の効果が最も高いのは通風雨戸で、70~90%の日射をカットできます。初期費用は高いですが、庇ではカットしきれない低い角度の日射にも対応可能です。



窓の内側でできる日射遮蔽

前項で「日射遮蔽は窓の外側でおこなうのが理想的」とお話ししましたが、実際にどれほどの差があるかというと、窓の外側では日射を70~80%カットできるのに対し、内側では30~50%に落ちると言われています。



ただ、窓の外側で日射遮蔽をおこなうほうが効率的とはいえ、状況によっては内側で対応せざるを得ない場合もありますよね。そこでおすすめしたいのが「ハニカムスクリーン」です。ハチの巣構造による断熱効果で、種類によっては日射を60%以上カットできるものもあります。夏の日射遮蔽だけでなく、冬は室内の暖気を逃がさないことにも役立ちます。



ハニカムスクリーンの魅力と選び方

魅力①断熱性が高い

ハニカムスクリーンの最大の強みは、空気層による優れた断熱性です。しかし、「ただの空気に本当に断熱効果があるの?」と疑いたくなってしまいますよね。数字をもとに詳しくみてみましょう。熱の伝わりやすさは「熱伝導率」で表され、数値が大きいほど熱が伝わりやすいということです。つまり、数値が小さいほど断熱性が高いことを示しています。



【熱伝導率(W/m・K)】

 • ガラス:0.55~0.75
 • 紙:0.06
 • 空気:0.0241
 • アルゴン:0.0164

数字をみると、紙に比べて、ガラスがいかに熱を通しやすいかがわかります。ただし、ガラスとガラスの間に空気やアルゴンガスを封入したペアガラスでは、断熱性が飛躍的に向上します。クリプトンガスを使ったものはさらに高断熱です。そして注目すべきは、空気の数値です。その熱伝導率の低さからわかるように、空気はとても優れた断熱材です。ペアガラスよりも厚い空気層を持つハニカムスクリーンは、高い断熱性能を持っているのです。



魅力②断熱性能を調節できる

ハニカムスクリーンの魅力は、開閉により断熱性能を調節できる「可変性」にあります。この可変性は、窓からの熱の出入りをコントロールするのに大きな役割を果たします。



例えば、南向きの窓にはダブルガラスが採用されることが多いのですが、その理由は冬の日射取得が関係しています。ダブルガラスはトリプルガラスよりも熱損失が大きい一方で、太陽の熱を多く取得でき、結果的にダブルガラスのほうが熱収支はプラスになります。高断熱なのはトリプルガラスですが、取り付ける場所によってはダブルガラスのほうが有効なケースがあるということです。



しかし、ダブルガラスの熱収支がプラスになるのは太陽が昇っている時間帝に限られます。太陽が陰るとダブルガラスはトリプルガラスよりも熱損失が大きくなってしまいます。その弱点をカバーできるのが「ハニカムスクリーン」です。



日中はハニカムスクリーンを開けて太陽の熱を積極的に取り込み、太陽が沈んだらハニカムスクリーンを下ろして断熱性能を上げる。そうすることで、太陽の熱を最大限利用でき、室内を快適な温度に保ちやすくなります。また、ハニカムスクリーンは後付けができるため、住み始めた後で窓の断熱性を補強することも可能です。



このようなハニカムスクリーンの可変性は、設備に頼らず自然エネルギーを活用するパッシブ設計において、非常に重要な役割をもつのです。



ハニカムスクリーンの選び方

ハニカムスクリーンにはいくつかのタイプがあり、それぞれ特徴が異なります。大まかにご紹介しますので、ぜひハニカムスクリーンを選ぶときの参考にしてください。



◎採光/遮光

生地の種類によって遮光レベルが違います。自然光を取り入れたい人は採光タイプを、「朝日のまぶしさが苦手」「テレビやプロジェクターを見るのに外の光をしっかりと遮断したい」という人は遮光タイプを選びましょう。




◎取り付け方

窓の奥行きにすっぽりはめ込む「天付」と、窓枠の外側に取り付ける「壁付」があります。天付は窓とハニカムスクリーンのすき間が最小限になるため断熱性が損なわれにくく、見た目もすっきりとします。ただし、窓の取っ手が大きいとハニカムスクリーンと干渉してしまうため、壁付になります。




◎操作方法

電動タイプは、ボタン一つで簡単に上げ下げできて便利ですが、工事費や制御盤が必要です。後付けは難しいため、新築時に取り付けることをおすすめします。



手動タイプには4種類あります。

①コードタイプは、ブラインドと同様にコードで開閉します。
②コードレスタイプは、コードがなく、レールを滑らせて開閉します。やや高額ですがコードがぶら下がっていない分、見た目がすっきりとします。
③上下コードタイプは、両側に2本のコードがあり、窓の上側と下側をそれぞれ開閉できます。
④ループコードタイプは、ループ状のコードを引いて回して開閉します。ワンタッチで開閉はできませんが、ループコードを長くすることで人の手が届かない高い位置の窓を操作できます。



この4つの中でもとくにおすすめしたいのが、③上下コードタイプです。窓の上側と下側をそれぞれ開閉できるので、「太陽の光は入れたいけど通行人の視線は遮りたい」というシーンに最適です。人間の視線は特定の高さに集中しやすいため、部分的にスクリーンを下ろせばプライバシーを守りつつ日射取得できます。また、エアコンが高性能すぎて除湿機能がすぐに止まるという場合も、部屋に少し日射を入れてあげれば除湿機能が止まりにくくなります。



暑い夏を快適に過ごせるかは「窓」次第!

家の快適さは、熱の出入りが多い「窓」の日射遮蔽をいかに極められるかで変わります。窓の日射遮蔽がうまくできていれば、最低基準の断熱性能であったとしてもかなり快適な家を実現できます。窓の外側は庇、窓の内側はハニカムスクリーンで日射遮蔽をおこなったうえで、予算に余裕があれば通風雨戸を、予算に余裕がなければアウターシェードを組み合わせるとよいでしょう。



窓への対策のほか、冒頭でご紹介したように

 • 屋根・壁で日射を反射する(光を吸収する黒色ではなく、白やシルバーなどにする)
 • 断熱材で熱の伝わりを防ぐ
 • 通気層を通じて、壁や屋根の内部の熱を逃がす

これらも念頭において複合的に日射遮蔽をおこない、快適に過ごせる家を実現させてくださいね。