こんにちは。私の名はティール教授。当研究室へようこそ。今日も私の研究課題である家づくりについて話していきましょう。
「リビング階段はアリか、ナシか」は、家づくりでよく挙がるテーマですよね。「冷暖房が効きづらくて、リビング階段をつくって後悔した」という体験談を耳にしたことがある人もいるでしょう。しかし、冷暖房の効きづらさは解決できる問題であり、実はリビング階段にデメリットはほとんどないのです。
今回は、リビング階段との相性を確かめるためにも、リビング階段のメリット・デメリットを改めて整理してみましょう。
家族とコミュニケーションがとりやすい
リビング階段があると、1階と2階を行き来する際に必ず家族がいるリビングを通るため、自然とコミュニケーションの頻度が増えます。子どもが帰宅後にそのまま2階の自室に上がろうとしても、表情や様子を確認できます。ケンカをした際も、階段を使うたびに否が応でも顔を合わせることになるため、仲直りのきっかけが生まれやすいでしょう。
また、リビング階段と吹き抜けを組み合わせると、2階にいる子どもの気配を1階にいながら感じられたり、「ごはんできたよー」と1階から気軽に呼びかけたりできます。
おしゃれな印象になる
リビング階段はそれ自体が空間のアクセントになり、デザイン次第でさまざまな印象に仕上げられます。例えば、オープンな鉄骨階段は開放的、モダン、スタイリッシュな印象に。無垢の木を組み合わせるとナチュラルで温かみのある印象に仕上がります。また、直線階段はスッキリとした印象を与え、L字型やコの字型の階段は空間に立体感を演出できます。
階段下のスペースを有効活用できる
階段下のスペースを収納として活用するのもよいですし、小さな子どもがいる家庭なら秘密基地のようなキッズスペース、ペットがいるならペットのための隠れ家にするのも面白いでしょう。大人向けならデスクワークスペースがおすすめです。
また、階段下をそのままテレビスペースに活用するのも一つの方法ですが、一工夫して壁を設け、半分クローズドなリビング階段にする方法もあります。壁をつくることで壁掛けテレビを設置できるだけでなく、その壁に周辺機器を納める収納をつくればスッキリとしたテレビスペースにできます。
1階の廊下の面積を最小化できる
リビング階段の最大のメリットと言っても過言ではないのが、1階廊下の面積を最小化できることです。家づくりのコストを大きく左右するのは面積なので、コストを抑えたいなら面積をコンパクトにするのが最も有効です。廊下のための面積を他の居室や収納に充てることもでき、ムダのない間取りを実現できます。
冷暖房が効きづらい
リビング階段の代表的なデメリットとされているのが冷暖房の効きづらさです。これは家の性能が大きく影響します。気密性・断熱性が不十分であれば、冷暖房の効きは悪くなり、とくに冬は寒く感じてしまいます。
音やニオイが2階にあがる
リビング階段は2階ホールとリビングがつながるため、音やニオイが2階に伝わりやすくなります。2階で子どもが遊んでいると1階に音が響きますし、逆に1階のリビングの音も2階に届きやすくなります。とくに、2階の自室で勉強に集中したい学生がいる家庭では気がかりな問題かもしれません。また、食事のニオイもリビング階段を通じて2階に上がりやすいです。
来客と顔を合わせやすい
「突然子どもが家に友人を連れてきた」という経験がある人は多いと思います。リビング階段の場合、子どもが2階の自室に友人を案内する際に必ずリビングを通ることになります。そのため、リビングでくつろいでいたりリビングが片付いていなかったりすると、どうしてもその様子が目に入ってしまい、お互いに気まずい思いをすることになります。
リビング階段のデメリットを挙げましたが、実はどれも決定的なデメリットとは言い切れません。
というのも、それぞれ工夫をすれば十分に解決可能だからです。
「冷暖房が効きづらい」は過去の話。吹き抜けがない場合はダクトを配置する
昔と比べて現代の家は気密性・断熱性が大幅に向上しており、一定以上の断熱性が保たれていれば冷暖房が効きにくいということはありません。また、最近は全館空調を取り入れる人が増加しています。全館空調の家はリビング階段や吹き抜けなどの空気の通り道がないと、反対に冷暖房の効きが悪くなることがあります。
吹き抜けを設けない場合は、冷気や暖気を各階に届けるために、大きなダクトを通す方法があります。冷房は、ファンと仕切り(チャンバーボックス)を通じて小屋裏エアコンからの冷気を1階に送ります。同様に、暖房もダクトを通じて1階に送ることができるため、暖房のために床下エアコンを設置する必要がなくなります。
建具を設ける
建具を設けて開閉できるようにすれば、音とニオイが2階に上がることを防ぎ、「冷暖房が十分に効かないかも」という不安も軽減できます。鉄骨階段のようなオープンな階段には、踊り場に建具を設ける方法があります。また、視線が気になる場合は、ロールスクリーンで仕切るのも効果的です。
来客時のルールを決める
くつろいでいる家族と来客が顔を合わしてしまう問題は、家族の行動を変えるしかありません。例えば、パジャマなどの人前に出られない格好をしてリビングでくつろぐ家族がいる場合、せめてリビングでは人に会える程度の服装をしてもらいましょう。
また、家族内で来客予定をしっかりと共有しておくことが重要です。もし、そうした決め事が難しい場合、リビング階段との相性がよくないため、採用を見送ることも視野にいれましょう。
リビング階段のデメリットのなかで最も解決が難しいのは来客問題で、他のデメリットは解決可能なものばかりです。デメリットだけに注目してリビング階段を避けるのはもったいないので、工夫次第でどうにでもなるということを、ぜひ知っておいてください。また、1階廊下の面積を最小化できる点は大きなメリットなので、その点も考慮してリビング階段を検討してみてくださいね。