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【注文住宅】カッコいい家に潜む問題点|キューブ型・中庭のある家

こんにちは。私の名はティール教授。当研究室へようこそ。今日も私の研究課題である家づくりについて話していきましょう。



ロの字やコの字といった、四角い形のシンプルで洗練されたキューブ型の家に中庭。そんな、雑誌やテレビで見るようなおしゃれなマイホームを希望する方が増えています。中庭は近所の視線を避けられますし、庭で遊ぶこどもが道路へ出てしまう心配も減らせます。開放的でありながらプライベートも守られて、おしゃれ。まさに理想の家です。



しかし、こういった「カッコよくて映える家」にはとても大きな問題点が潜んでいます。細かいところまでよく考えて設計しないと、メリットよりもデメリットのほうが多くなり、住みにくい家になってしまうことも。後悔のない家づくりのために、中庭のある家やキューブ型の家を検討している方はぜひ今回のコラムを参考にしてくださいね。



[目次]

1.問題点①断熱性が低くなりやすい

2.問題点②日射取得が難しい

3.問題点③構造上、弱い箇所ができる

4.問題点④中庭に厳重な排水対策が必要になる

5.問題点⑤デザイン重視で屋根の換気が不十分になりやすい

6.デザイン重視の家で暮らすにはお金がかかる



問題点①断熱性が低くなりやすい

中庭のある家は、中庭のない家と比べて外周が長くなり、外気にさらされる面積が増えます。下の図の青い線の部分は、本来であれば室内になる部分ですが、中庭をつくることで外に面してしまいます。加えて、中庭に面した部屋は大きなガラス窓を取り付けることが多いでしょう。その結果、断熱性が低くなり、外気の影響を受けやすい家になってしまうのです。

その点をカバーするために断熱性の高いトリプルサッシの窓を取り付けるとよいのですが、一般的な窓よりもかなり高額ですし、いくら断熱性が高いといっても窓は窓なので壁の断熱性には敵いません。快適な室温を保つためには空調設備に大きく頼ることになるので、光熱費がかさむと考えておきましょう。また、家の外周が長くなるということは、壁をつくる費用もその分増えることもお忘れなく!



【トリプルサッシについてはこちらのコラムで詳しく解説しています】
トリプルサッシを過信した家づくりはハイリスク!肝心なのは「切り方」



問題点②日射取得が難しい

キューブ型の家はシンプルですっきりとした外観にするために、基本的に外からみえる部分に小さい窓を、中庭側に大きな窓を設置します。残念ながら、このデザインでは太陽の恩恵を十分に受けられません。例えば、太陽が低い位置にある冬。ロの字型の家の場合、光は窓から取り込めるので家の中が暗くなることはありませんが、太陽の熱を取り込むほどの日射は得られません。



一方、太陽が高い位置にある夏は朝から夕方まで強い日射がどんどん入ってきます。というのも、キューブ型の家の多くはデザインを優先して窓に庇(ひさし/窓や玄関の上に取り付ける小さな屋根)をつけないため、日射の加減を調節できません。つまり、冬は寒く夏は暑くなりやすい構造なのです。



ではコの字型ならロの字型よりも太陽をうまく利用できるかというと、そう単純な話でもありません。コの字をどの方角に向けるかによりますが、図のとおりその形故に影をつくってしまうため思うように日射を得られないのが実情です。

また、日射取得の問題は中庭の環境にも影響します。日射が得られない上に四方、三方を囲まれているため、中庭には湿気がこもりやすいということも念頭においておきましょう。



問題点③構造上、弱い箇所ができる

中庭をつくる場合、そのデザインを活かすために中庭に面した部屋には大きなガラス窓を多く取り付けます。壁が少なくなることで構造上その部分は弱くなるため、補強のための工夫が必要となります。



問題点④中庭に厳重な排水対策が必要となる

中庭には屋根がないため、当然ながら雨が降り込みます。通常レベルの雨なら何の問題もありませんが、近年は温暖化などの影響で局地的集中豪雨が増加しています。短時間に大量の降雨に加え、屋根から中庭に雨水が流れ込むこともあり得ます。



排水が追いつかない場合どうなるかというと、中庭が一部水没する程度で済めばよいですが、雨水が溜まり続けると床下や部屋に浸水する可能性もあります。排水を促すために中庭に勾配を設けるのはもちろんですが、集中豪雨レベルの雨量でも処理できるよう、排水の仕組みは十二分に整えておきましょう。



問題点⑤デザイン重視で屋根の換気が不十分になりやすい

家がどれだけ長持ちするかは屋根の耐久性にかかっており、その要が屋根の換気です。それはキューブ型の家の特徴でもある平らな屋根も同じ。キューブ型の家の場合、少し勾配をつけて三方にパラペット(壁のような立ち上がり)を施し、片流れにして裏に雨水を抜くというパターンが多いのですが、このパラペットの部分から屋根の換気をします。

かしキューブ型というシンプルで洗練されたデザインを優先するあまり、パラペットに笠木(かさぎ/蓋のようにかぶせる部材)だけという不十分な施工も見受けられます。換気があまいと将来的に屋根が傷み、家そのものが傷みます。



キューブ型の家はローコストで建てられるという宣伝も見かけますが、屋根のようにお金をかけるべき箇所のコストを削減している可能性もあります。屋根の換気対策としてどのような施工をおこなうのか、ハウスメーカーや工務店にまかせっきりにせず、必ず確認をとりましょう。



【屋根の仕組みや換気の重要性はこちらのコラムで詳しく解説しています】
屋根の寿命は「換気」で決まる!屋根材よりも換気にこだわろう



デザイン重視の家で快適に暮らすにはお金がかかる

キューブ型や中庭のある「カッコいい家」は、断熱性や日射取得など住宅としては大きすぎる問題を抱えています。そこで快適に暮らすためには設備や光熱費など、お金をかける必要があります。マイホームとして本当に適当なのか、慎重に検討したうえで選択してください。



そして、このような家を建てる場合には今回ご紹介した問題点をうまくカバーできるよう、設計は念入りにチェックしてくださいね。



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