こんにちは。私の名はティール教授。当研究室へようこそ。今日も私の研究課題である家づくりについて話していきましょう。
人間が快適さを感じる温度は、頭部は22度程度、足元は26度程度と言われています。暖房が効いた部屋で過ごしていても、顔は熱いのに足元だけが冷えることがあるのはこのため。足元が冷えると体感温度が下がり、暖房温度が適切でも「寒い」と感じてしまいます。
フィックスホームの設計コンサルタントで一級建築士の松尾先生は、「寒い冬でも快適に過ごすためには、住宅の断熱強化の次に床の温度が重要です」と話します。そして、床の温度をあたたかく保つのにベストな暖房が「床下エアコン」だといいます。
今回は、床下エアコンのメリットと設置方法をご紹介します。家づくりにおける暖房方法のひとつとして、ぜひ参考にしてください。
国際標準化機構(ISO)が定める快適な室内条件のひとつに、「頭部と足元の温度差を3度以内に抑える」ことが挙げられています。
ところが、松尾先生いわく「壁付けのエアコン暖房の場合、あたたかい空気は上部に溜まっていくため、次世代省エネ基準を満たした住宅でも上下に3〜4度の温度差が生じます。
足元の理想的な温度は頭部温度より4度高いので、理想温度から7度も差が生まれることになります」とのこと。そのため、足元付近が寒くなり、室温が25度前後であっても体が冷えるような気がするのですね。
では、床暖房はどうでしょうか。確かに、足元から部屋全体を温めることによって、室内の上下温度差は縮まります。しかし、広い面積に床暖房を設置するとなると、初期費用がかなり高額になってしまいます。また、無垢フローリングなど、床暖房を使えない床材も多く、暖房の方法としてベストとは言いきれません。
床下エアコンは、市販の壁掛けエアコンや床置き型エアコンを床下に設置して床下全体をあたため、さらにあたたかい空気を各部屋に送り込む仕組みです。足元からポカポカとあたたかいうえ、風が肌に直接あたる不快感もなく、優れた暖房方法といえます。
ただ、ここで気になるのが電気代。通常の壁掛けエアコンよりも年間暖房費が高くならないのでしょうか。「床からあたためることで足元の温度が室温+2度ほどに保たれます。すると、室内の上下温度差が2度程度まで縮まります。上下温度差が少ないため、これまでと同じ設定温度でも、体感温度は高くなるんです」と松尾先生。
つまり、床下エアコンなら、壁掛けエアコンより2度ほど低い設定温度でも同じあたたかさを感じることができるというのです。次世代省エネ基準の住宅の場合、暖房の室温を1度下げると、年間の暖房費は東京の電気代で計算しておよそ1万円下がります。2度なら約2万円の節約になります。
さらに松尾先生は「夏場は、小屋裏に冷房専用のエアコンを一台設置して24時間作動すれば、家全体を冷房することができます。1階までより強く冷やしたい場合は、床下のエアコンも併用するとよいでしょう」と話します。この方法なら、高温多湿な夏でも湿度を60%程度におさえることができるそう。湿気が好物のカビやダニの繁殖も防ぐことにつながりますね。
省エネで効率的な床下エアコン。最近では、全国の住宅会社や工務店が住宅に導入している会社も増えてきていますが、なかには、形だけをまねたまがい物もあるので、注意が必要です。
まず、1台のエアコンで家全体の空調をまかなうためには、住宅の断熱性・機密性が高いことが大前提です。住宅の断熱強化を考慮せずに導入しても、満足のいく効果は得られません。
また、設置には工夫も必要です。というのも、床下だけではなく、同時に室内空気もあたためなければ室内温度差が大きくなり、暖房効果を実感しにくいからです。エアコンのあたたかい風が大量に床上に吹き出すように設置しなければいけません。暖房方法に床下エアコンを選択する際は、このことをぜひ、念頭に置いておいてください。
気密・断熱性能に優れた住宅をせっかく建てるのですから、そのポテンシャルを最大に生かすことができるシステムを導入したいもの。その点、暖房も冷房もたった1台のエアコンでまかなえる床下エアコンは、次世代省エネ基準を満たす住宅との相性がよく、経済的でおすすめです。選択肢のひとつに入れてみてはいかがでしょうか。